硬水と軟水、飲むならどっち?-知っているようで知らない違いと効果
毎日飲むお水のことで、知っているようで詳しくは知らないという人が多い「硬水」と「軟水」の違い。
筆者も調べるまでは、硬水は飲みづらい、軟水は飲みやすい・・・くらいのイメージしかありませんでした。しかし実際は、様々な違いがあります。
健康や美容のためにお水を飲んでいきたい、と考えている方は、飲むお水の種類も自分にあったものを選べるといいですよね。
今回は、硬水と軟水について知識がない方にも分かりやすいように、味や効果の違いをまとめていきたいと思います。
目次
ざっくり言うと、硬水と軟水は何が違うの?
大まかに言うと、お水に含まれている栄養分の多さが違います。
お水は透明ですが、その中にはいろいろな種類のミネラル成分が溶け込んでいます。
ミネラルは無機質ともいい、人の体の中では作り出すことができない栄養分です。カルシウムやマグネシウムというと、聞いたことがある方も多いかもしれません。
人の体で作り出すことができないから、お水や食事から摂取していく必要があります。
そしてミネラルには味があるので、水に溶け込んでいる量によって味が変わります。
「硬度」とは
お水の硬度とは、一言で言うとミネラルが含まれている量を示す度合いです。
一般的に1リットルあたりのミネラルの量(カルシウムやナトリウムなど)で表記し、「30mg/L」のように書きます。
軟水は、硬度の数値が低い=ミネラルが溶け込んでいる量が少ないお水を指します。
一方、硬水は硬度の数値が高い=ミネラルが豊富な水のことです。
市販のミネラルウォーターのペットボトルラベルにも、硬度が記載されている場合があります。
これは筆者が飲んだ、富士山の天然水のペットボトルです。例えば、こんな感じで印字してあります。
軟水と硬水の定義
WHO(世界保健機関)の基準では、おおまかには硬度120mg/L未満の水を軟水、120mg以上の水を硬水と分類しています。
細かい分類は下記のとおりです。
硬度 | WHOの定義 | 日本で市販されているミネラルウォーター |
---|---|---|
軟水 | 60mg/L以下 | 南アルプスの天然水(約30mg/L) い・ろ・は・す(約30mg/L) クリスタルガイザー(約32mg/L) |
中程度の軟水 | 60~120mg/L | ボルヴィック(60mg/L) FIJI Water(106mg/L) |
硬水 | 120~180mg/L | ドクターシリカウォーター(136mg/L) |
程度の強い硬水 | 180mg/L~ | エビアン(304mg/L) コントレックス(1468mg/L) |
参考:WHO/HSE/WSH/10.01/10/Rev/1 Hardness in Drinking-water(PDF)
表の上2つの項目が軟水、下2つの項目が硬水です。
日本で市販されている飲み水は、ほとんどが硬度30mg/L前後の軟水です。
例えば、ウォーターサーバーで「ミネラル豊富」と打ち出している天然水も、多くが硬度20~60mg/Lくらいの軟水です。
一方、欧米などのミネラルウォーターは硬水のものが多いです。
この表に記載されているエビアンとコントレックスは、どちらもフランスの硬水ミネラルウォーターです。
日本は昔から水道水や飲み水に軟水が多く、日本人の口に合うと言われています。
確かに、硬水を飲むと「苦い」「飲みにくい」と感じる人も多いです。逆に、ヨーロッパは硬水が一般的です。
豆知識:日本で軟水が多く、欧米で硬水が多い理由
大きな理由は、日本とヨーロッパの自然環境の違いです。
日本はミネラルが少ない火山の山脈地帯が多く、湧き水はその場にとどまらず下流に流れていきます。
地中に滞留する時間が短いので、水に溶け込むミネラル分が少なくなる=軟水になりやすいです。
一方、欧米ではミネラル豊富な石灰の平野が多く、傾斜が少ないので水が長く地中に留まります。その間にミネラルが地下水にたくさん溶け込み、硬水になりやすいです。
もちろん自然環境には地域差が大きいので、日本でも硬水が採水できる地域はありますし、ヨーロッパで軟水が採れる地域もあります。
例えば日本産の硬水としては、四国カルストで採れる「ぞっこん水(107mg/L)」や、大分の長湯温泉の温泉水「マグナ1800(900mg/L)」などが販売されています。
日本人の口に合う軟水の特徴は、飲みやすくて体に優しいことです。では具体的にどのような特徴があるか、メリットとデメリットを具体的に見ていきましょう。
軟水のメリット
まずは軟水のメリットから見ていきます。飲みやすさやお料理への使いやすさがあり、飲む人を選ばないお水です。
日本人の口に合い、飲みやすい
前述の通り、軟水は日本人が飲み慣れたお水です。健康や美容のためにお水を積極的に飲むようにしても、続きやすいかと思います。
和食や日本茶が美味しく作れる
ミネラルが豊富な硬水は、薄味の和食に味付けに影響してしまうので、和食に使うのは軟水が望ましいです。
白ご飯も、軟水を使うとふっくらと炊き上がります。
味付け以外に硬水を避けた方が良い理由は、食べ物のたんぱく質はミネラル成分のカルシウムと結びつくと固まってしまうからです。
硬水でお魚やお肉料理を作ると、身が固くなってしまい旨味成分も溶け出しにくくなってしまうので、軟水が適しています。
また、緑茶などの日本茶も旨味成分を引き出すことでおいしくなるので、軟水で淹れるのがおすすめです。ただし、硬度10mg/L以下のピュアウォーターに近いお水は、苦みが強くなりすぎる場合もあるのでご注意を。
豆知識:関西と関東の味付けの違い
一般的に、関西の料理は味付けが薄く、関東の味付けは濃い、というイメージがあります。これにも、水の硬度が関係していると言います。
関西の方が関東より水の硬度が低い軟水で、和食の味付けは昆布出汁の味付けが広まりました。
この背景から、薄味の昆布出汁などで、繊細な味付けの食事が発展しました。
水の硬度が高めの関東では昆布の出汁が取りづらいため、動物性たんぱく質の魚の出汁(かつお節など)が広まったそうです。
硬度が高い水は灰汁(あく)が出やすいため、味付けが濃い食事が一般的になっていきました。
赤ちゃんやお年寄りの体への負担が少ない
赤ちゃんやお年寄りの方にとっては、過度なミネラルは体の負担になります。
軟水であれば、飲む人を選ばず、内臓に負担をかけずに飲むことができます。
赤ちゃんに飲ませるミルクは硬度50~60mg/L以下が望ましいとされています。
軟水のデメリット
軟水に決定的なデメリットはありませんが、硬水にミネラルが少ないため栄養素は摂りづらいです。
ミネラルはあまり摂れない
カルシウムやマグネシウムといったミネラルを摂取できる量は少ないので、食事などで十分にミネラルを補う必要があります。
栄養を摂ることがメインではなく、飲みやすいお水でこまめな水分補給をしたり、おいしい和食を作ったりするお水として使うのが良いでしょう。
ピュアウォーターは味気ないと感じる人もいる
ミネラルを最大限取り除き、純水に近い状態にしたピュアウォーターというお水があります。ウォーターサーバーの水の種類で言うと、「RO水」の種類の一つです。
ミネラルはもちろん、放射能物質やウイルスも除去しているので安全なお水ですが、無味無臭なのでおいしくないと感じる人もいます。
個人差はありますが、普段天然水などのナチュラルミネラルウォーターを飲んでいる人にとっては、物足りないかもしれません。
しかし、さっぱりとした味わいで飲みやすいと感じる人や、料理の味をじゃましないので愛用しているという方も多いです。
日本ではピュアウォーターの扱いは少ないですが、アルピナウォーターという宅配水や、クールクーという水道水直結ウォーターサーバーは、自宅で簡単にピュアウォーターが飲めるようになります。
硬水のメリット
続いて硬水の特徴を、まずはメリットから見ていきます。硬水はミネラル成分が豊富に含まれているので、健康・美容効果が期待できます。
ダイエット効果がある
硬水のミネラルの中には、便秘解消や脂肪の吸収抑制、代謝促進効果があるものも含んでいるので、ダイエット効果が期待できます。
コントレックスなどの硬度の高い硬水を飲んだら、すぐにお通じがあったという口コミもありました。お腹が弱い人は、高すぎない硬度のお水から始めたり、少しずつ飲み始めることをおすすめします。
代謝が改善されればダイエットだけでなく、美肌効果も期待できそうですね。
洋食や紅茶、中国茶がおいしく作れる
硬水には灰汁(あく)を出しやすくする効果があるので、ヨーロッパでは肉料理を煮込む際に臭みを消すために使われます。
また、たんぱく質を固めるので煮崩れを防ぐ効果もあります。シチューや洋風の肉料理を作る際は硬水を使ってみてください。
お米に関しても、ふっくらとした白米を炊くのには軟水が適していますが、お米をぱらっとさせたい時は硬水で炊くのがおすすめです。
ピラフやチャーハンを作る際に試してみたいですね。
また、紅茶や中国茶も硬水で淹れると美味しい銘柄が多数あります。例えば、渋めの味わいのアッサムを硬水で淹れると、飲み口がマイルドになります。烏龍茶もおいしく飲むことができますよ。
豆知識:イギリスでミルクティーが人気だった理由
紅茶といえばイギリス、とイメージする方も多いと思います。
19世紀頃からプランテーションが広まり、安くて質の高い紅茶を手に入れられるようになったことで庶民にも紅茶が普及しました。
特にロンドンではミルクティーをよく飲んでいたと言いますが、それにもお水の質が関わっています。
イギリスのお水は硬水で、硬水で入れた紅茶は香りや味がまろやかになり、そこにミルクを注ぐと水色みを帯びたきれいなミルクティーになります。
その美しさから、ミルクティーが流行したという説があります。
生活習慣病の予防になる
硬水には、高血圧や糖尿病の予防になるミネラルが含まれています。
例えばカリウムは、塩分を摂りすぎた際に体内で増えたナトリウムの量を減らす作用があります。
生活習慣病のリスクに悩む方の中には毎日が忙しく、ミネラルの少ない加工食品を多く食べる方も多いかと思います。
そんな方は、コップ1杯の硬水を朝晩に飲んでみるのも良いと思います。
硬水のデメリット
硬水には飲みづらいという味以外にも、飲みすぎると体に負担がかかるというデメリットがあります。
無理のない範囲で取り入れていくように心がけてください。
味が苦手な人もいる
水の味は、ミネラルの味です。硬度が高い水ほどミネラルの味が強くなり、日本人にとっては飲みづらく感じる水になります。
豆知識:硬水を飲みやすくする方法
体のために硬水を飲みたいけど、やっぱり味が苦手でつらい・・・という方向けに、少しでも硬水を飲みやすくする方法をご紹介します。
■氷にする
硬水の氷を作り、硬度の低い飲み物に入れて飲む方法です。硬水の味わいが和らぎます。
■冷たくする
硬水を冷やすだけでも飲みやすくなります。ワイングラスなどの持ち手があるグラスに入れて飲めば、手の体温で水がぬるくなることを防げます。
■レモンやシロップをくわえる
レモンを入れれば爽やかに、シロップを加えればまろやかな味になります。レモンとシロップを混ぜたレモネードを作ってみるのも良いかもしれません。
胃腸や腎臓など、内臓に負担がかかる場合がある
ミネラルの過剰摂取は体に負担をかけてしまいます。特に、胃腸や腎臓が弱い人は注意が必要です。
便秘解消に効果がある硬水も、胃腸が弱い人にとってはお腹がゆるくなる原因になります。少量から飲み始めて、様子を見てみることをおすすめします。
また、硬水に多く含まれれるカルシウムは、結石ができやすくなります。腎臓機能が弱っている人はあまり多く摂りすぎないようにしてください。
硬水が苦手な人は、ミネラルが豊富な軟水「天然水」がおすすめ
軟水で、比較的ミネラルが多く含まれているお水もあります。
日常的に栄養分の多い軟水を飲みたい人は、天然水のウォーターサーバーを利用するケースも多いです。
硬度80mg/L前後の天然水を扱う代表的なウォーターサーバーブランドは、プレミアムウォーター(採水地:金城)やフレシャス(採水地:朝霧高原)です。
もう少し高度が低い天然水から試してみたい方は、コスモウォーターの「日田の誉(硬度62mg/L)」というお水がおすすめです。
一般的なウォーターサーバーのお水の硬度は30mg/L前後と、市販のミネラルウォーターと同じくらいです。おいしくて飲みやすい水と言えます。
硬度が高めの天然水は、軟水が飲みたいけどミネラルはしっかり摂りたいという方が試しやすいかと思います。

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